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豊胸脂肪注入20年の動向とその問題点

効果よりリスクが高かった初期の脂肪注入豊胸

効果よりリスクが高かった初期の脂肪注入豊胸

脂肪注入豊胸の歴史は意外と古く、山川統括指導医が美容外科医になった1990年代には一般的な豊胸手術だったと言います。採取した脂肪を茶こしに入れ、生理食塩水で血液成分などを洗い流すという当時の方法は、今でも日本の多くのクリニックで行われています。
しかし、この方法では注入後に細胞間の情報伝達の役割を担うサイトカインなど、必要な成分も洗い流すことになってしまいます。逆に、除去すべき老化細胞は残ってしまい、死活細胞も完全には取り除けません。そのため、実際に手術効果もあまり高いものではなく、それよりしこりや石灰化などのデメリットが多い手術でした。ましてや手術室内とはいえ、空気に触れるしかも手作業。当時は感染症などのリスクも高く、アメリカでは実質的に脂肪注入が長く禁止されている時期がありました。

幹細胞注入からコンデンスの時代へ

幹細胞注入からコンデンスの時代へ

時代は進み2006年頃、採取した脂肪の一部を酵素処理して幹細胞を取り出し、残りの脂肪と混ぜて注入するセリューション(脂肪幹細胞注入)という方法が登場しました。脂肪注入の効果を高めるには、幹細胞の密度を高める必要があると分かったからです。しかし、この方法では長い手術時間や幹細胞を抽出するために脂肪をロスするということが懸念点に。また、酵素使用の安全性も問題視されていたので、アメリカでは臨床応用の許可が下りず、日本など規制の緩い国のごく一部のクリニックが治験的に実施する程度でした。
そういった問題をクリアにしたのが、コンデンスリッチファット(CRF)です。2009年頃に韓国で誕生したこの技術は、酵素処理を行わず幹細胞を濃縮することを可能にしました。また、特殊なフィルターを使った加重遠心分離で死活細胞はもちろん、老化細胞も除去できるように。より少ないリスクで手術時間を短縮、治療効果も飛躍的に改善されたため脂肪注入のスタンダードとなり、導入クリニック数も増え続けています。その後、2010年には不純物の除去にクローズアップしたピュアグラフトも日本に導入されました。濃縮処理ができるという説明を見かけますが、実質は初期の手作業による脂肪のろ過を自動の密閉空間で行っていると言うと近いかもしれません。
そのため韓国や日本だけでなく、世界的にもコンデンスリッチファット療法(コンデンスリッチ豊胸)の普及が著しく、規制の厳しいアメリカでも認可され浸透。再び脂肪注入が盛んに行われるようになり、コンデンスリッチ豊胸を行うクリニックは日本の倍以上にもなっています。
とは言え、しこりには注入技術や注入量の判断などの人為的問題が関係するため、安全性の高いコンデンスリッチ豊胸でも、その点の課題が残されています。

コラムのポイント

  • 初期の手作業による脂肪のろ過は、効果よりリスクが高かった
  • 安全性の問題から、酵素処理を行う幹細胞注入法を規制する国も
  • コンデンスリッチ豊胸でも、注入技術などの人為的問題が残っている